20代・30代でキャリアに迷っているあなたへ。「木造ビル」と聞いて、一軒家を想像するなら、認識を10年アップデートする時が来ています。
住友林業「W350計画」(2018年2月発表)。創業350周年(2041年)を目標に、高さ350メートル・地上70階の木造ハイブリッドビルを東京に建てる構想。総工費約6,000億円、木材使用量約18万5千立方メートル、CO2固定量約10万トン(家庭1万世帯の年間排出量分)。
これ、SF映画ではなく、すでに実証実験段階。2019年につくば市に木造研究施設「筑波研究所 新研究棟」(木造3階・高さ約15m)が完成し、W350計画の開発拠点として強度・耐火などの性能検証が進められています。
なんで今「木で超高層」なの?
3つの社会的意義があります。第一に、CO2吸収と固定。木材は成長過程で大気中のCO2を吸い、伐採後も建築物として数十年・数百年CO2を閉じ込め続ける。コンクリートと鉄は逆に、製造時に大量のCO2を排出する(コンクリート1立方メートル300kg、鉄1トン2トン)。
第二に、脱炭素社会への貢献。建設業はCO2排出の最大セクターの一つ。木造化はゲームを変える手段です。
第三に、日本の林業再生。国土の7割が森林の日本で、戦後植林されたスギ・ヒノキは伐採適齢期。需要不足で「山に立ったまま」の木が大量にある。木造ビルが普及すれば、地方の林業・製材所・運送業まで経済が回り始めます。
木で350mって、本当に建つの?
結論、技術的にはすでに「行ける」状態です。現代の集成材(複数の木材を接着剤で積層)やCLT(直交集成板)は、鉄骨と同等以上の強度を持ちます。
世界では2019年、ノルウェーに高さ85.4m・18階の木造ビル「ミョーストーネット」が完成。2022年にはアメリカ・ミルウォーキーに同じく高さ86.6mの「アセント」(25階)が完成。日本でも2022年に大林組が横浜に「Port Plus(ポートプラス)」(地上11階・高さ約44m)を完成させ、日本初の高層純木造耐火建築物として注目されました。
住友林業の耐火集成材は、すでに最大3時間耐火(建築基準法の最高基準)をクリア。京都大学・国立研究開発法人森林研究機構との共同研究で、強度・耐火・耐震を検証中です。
20代がこの分野に入ると何が起きるか?
2025年4月施行の改正建築物省エネ法では、中大規模木造建築の推進が国の方針として明文化。林野庁ロードマップでは2030年までに公共建築物の木造化率倍増。市場が国策で動き始めています。
住友林業・大林組・竹中工務店・大成建設が木造建築部門を強化中。木造に強い1級建築施工管理技士は今、転職市場で引く手数多。年収は経験10年で700万〜1,000万円超のレンジに入ります。
これ、要は「ブルーオーシャン」です。鉄骨・コンクリート造の専門家は無数にいるけど、木造超高層を語れる若手はほぼいない。20代で入れば、10年後に「業界の先駆者」のポジションが取れます。
新しい職種が生まれている
木造ビルが普及すると、建設業の技能体系も変化します。「中大規模木造大工」「集成材加工技能者」「CLT施工管理技士」など、新しい職種が必要に。
住友林業はすでに自社グループ内で木造ビル施工に特化した技能者を育成中。木造分野は今後10年で大きく成長し、木造に強い施工管理技士・大工のキャリア価値は今後さらに高まる見通しです。
「未経験から大工」と聞くと地味な印象を持つかもしれませんが、木造超高層の大工は、世界に数えるほどしかいない希少職種です。
住友林業って、どんな会社?
1691年(元禄4年)創業の住友グループ系総合木材会社。創業当初は別子銅山(愛媛)の山林経営からスタートし、現在は林業・木材建材・住宅・海外事業を展開。連結売上高は約2兆円規模(2024年12月期)。
木造住宅事業では年間着工棟数約8,000棟と国内トップクラス。米国・オーストラリア・東南アジアでも住宅事業を展開しているグローバル企業です。林業から住宅まで一貫したビジネスモデルは世界でも珍しい。
世界の木造ビル動向
2026年現在、世界で最も高い木造ビルは米国ウィスコンシン州ミルウォーキーの「アセント」(高さ86.6m・25階)。次いでノルウェー・ブルムンダルの「ミョーストーネット」(高さ85.4m・18階)。
カナダ・バンクーバーのブロック・コモンズ(高さ53m・18階、2017年完成)、オーストラリア・メルボルンにも10階建ての木造ビルが複数完成。世界的に木造ビル建設は加速中で、各国の建設業界が技術競争に入っています。
コストは下がっていく
現状、木造ビルの建設コストは同規模の鉄骨造より20〜30%高い。集成材・CLTの製造コストと耐火被覆が原因。
ただし林野庁は2030年までに木造ビル建設コストを鉄骨造と同等にする目標を掲げ、補助金・税制優遇を充実させています。住友林業のような「林業+建設」の一貫企業は、コスト低減を主導する立場。
つまり、5〜10年後には木造ビルが「コスト的にも有利」になる可能性が高い。今のうちにスキルを積んだ若手が、その波に乗る側に立てます。
地方創生にも効く分野
木造ビル建設が普及すれば、地方の林業・製材所・集成材工場・運送業まで経済が回ります。林業従事者は2025年時点で全国約4万人。住友林業は2030年までに自社雇用の林業従事者を倍増させる計画。
「地方で働きたい」「地方創生に関わりたい」と思っている20代にも、木造建築分野は地に足の着いた選択肢です。東京で施工管理、地方で林業、その間を集成材工場が繋ぐ。一つの産業エコシステムが今、再構築されている最中です。
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